こどものころから本を読むのが好きで、学生時代はかならずカバンに小説なりドキュメンタリーなりエッセイなり、いろんなジャンルの一冊を入れて持ち歩いていました。高校までは歩いて通っていて、電車通学になった大学時代が、いちばん本を読んでいたころになります。毎日往復3時間以上かかる電車内では、読書が進むこと進むこと。おもしろいミステリー小説に当たれば、混雑した車内に立っていなきゃならない苦痛が、ずいぶんと減ってくれて、そういう意味でも読書は大切な習慣でした。文系の学科を専攻していたので、講義で出された課題の本を、電車内で読むことがよくありました。
お堅い内容の学術本がほとんどの中で、いちどだけ、あるフランスの作家の小説が課題になったことがあったんです。それは、題名だけならほとんどの人が知っているくらい、とても有名な小説。講義の先生が、なぜその小説を大学生に読ませたいのかを、「この作家がこの物語を書いたのは、みんなとおなじ年齢のころだったからです」と説明していて、課題とはいえ興味をそそられました。その小説は、たまたまともだちが持っていたので、かりて読みました。かなり薄めの文庫本。
往復3時間の電車内で、一日で読み終えてしまいました。翻訳されているのを差し引いても、おなじ年齢の人に、こんな深みのある小説が書けるなんて、フランス人はすごいなと、やや的外れな感想を持ったのをおぼえています。いまは仕事が忙しく、パソコンで目を酷使しているので、読書の時間はめっきり減ってしまいました。その分、あの若いころに記憶に残る小説を読んでおいてよかったなと、思ったりしています。